福沢絵画研究所 R

FUKUZAWA Art Institute R 1936 → 1941 / 2019 → ????

福沢の著書を読む会から「R」ヘ

from study group to "R"

研究会の様子 2013年7月

2013年4月、日本近現代美術の研究に携わる研究者有志が集い、福沢一郎著『シュールレアリズム』(近代美術思潮講座第4巻、アトリエ社、1937年)を精読する研究会が立ち上がりました。
研究会は1年に2〜4回のペースでおこなわれ、各回の発表者を決めて全10章の著作を1章ずつ読み進めるものでした。毎回6〜10人ほどの参加者があり、もともと福沢一郎という画家に興味のあった者だけでなく、福沢と同時代の作家の研究者、シュルレアリスム絵画に興味のある学生、画家であり美術史家でもある大学教員などなど、幅広い人々が集いました。そしておそろしくマニアックな、そして熱気あふれる精読が積み重ねられました。
研究会のなかで浮かび上がってきたのは、今までよく話題にのぼってきた「シュルレアリスム絵画の紹介者」という福沢一郎の評価とはまた別の、もっと積極的に新しい時代の絵画・芸術を若い世代とともに作り上げようという、福沢自身の強い思いでした。そしてその思いが戦争という危機に脅かされていたこと、しかし福沢絵画研究所などで福沢の思いを受け継いだ画家たちが、戦後日本の芸術に大きな足跡を標していることも、より明確になりました。
研究会の成果は、2017年12月に「まとめの会」を開いて発表しましたが、ぜひ出版まで繋げようということになり、2019年2月、公益財団法人出光文化福祉財団の助成を受けて、『超現実主義の1937年 福沢一郎『シュールレアリズム』を読みなおす』(みすず書房)として刊行することができました。
※ 研究会の内容は、みすず書房Webサイト内『超現実主義の1937年』ウェブ上「編集後記」対談(伊藤佳之・弘中智子)でもご紹介しています。

ここで研究会の活動はひと区切りついたのですが、せっかく生まれた研究者どうしのつながりを終わらせてしまってはもったいない、という意見が出され、どのような方策があるかを有志で検討した結果、福沢がかつて主催した研究所の名を借りて、今までよりもう少し幅広く活動できるようにしよう、ということになりました。
かくして「福沢絵画研究所R」はスタートしました。
当面中心となるメンバーは、大谷省吾(東京国立近代美術館美術課長)、小林宏道(多摩美術大学美術館学芸員)、弘中智子(板橋区立美術館学芸員)、そして世話人の伊藤佳之(福沢一郎記念館非常勤嘱託)です。
今後さらに幅広い活動を展開するため、多くの方々のご参加をおまちしております。もちろん、各イベントへのご参加のみでも大歓迎です。


研究会に集った人々の著作紹介

Books by members of the study group

滝沢恭司編『福沢一郎 パリからの帰朝者』

『シュールレアリズム』など福沢の戦前の著作を3つ収録。編者による解題はわたしたち研究会の道標となりました。(コレクション日本シュールレアリスム11、本の友社、1999年)

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速水豊著『シュルレアリスム絵画と日本 イメージの受容と創造』

著者は、福沢の初期作品とエルンスト『百頭女』の関係を、図版の引用元からはじめて明らかにした研究者。福沢のほか古賀春江、三岸好太郎などによる日本の「シュルレアリスム絵画」に関するわかりやすい入門書。(NHKブックス、NHK出版、2009年)

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小林俊介著『難波田龍起―「抽象」の生成』

日本の抽象絵画を代表する画家として知られる難波田の、初期から晩年に至る制作の変遷を丁寧に紐解いた良著。(美術出版社、1998年)

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大谷省吾『激動期のアヴァンギャルド: シュルレアリスムと日本の絵画 一九二八-一九五三』

著者が学生代から積み重ねてきた、昭和初期の「シュルレアリスム絵画」を中心とした研究の集大成。福沢の初期作品には綿密かつ大胆な考察が加えられています。(国書刊行会、2016年)

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